湾岸箋

一生オタク。

夏川椎菜の『オリジナル。』

 

オリジナル。

オリジナル。

 

 

 

 

アニメ『亜人ちゃんは語りたい』のOPとして発売されたTrySailの5thシングル、『オリジナル。』。作詞は脚本家の岡田麿里、作曲・編曲はクラムボンのミトという布陣で製作されたこの楽曲は、初動枚数12,401枚を売り上げ*1TrySailとしては3rdシングル『whiz』から4作連続*2で初動1万枚以上の売り上げを記録している。

個人的にTrySailの楽曲はこの『オリジナル。』や『whiz』のような爽やかなチューンにメッセージ性のある歌詞が乗っているタイプが好みなので、嬉しいこと限りない。

今回はこの『オリジナル。』という楽曲について考えてみることにする。とはいえ一介のオタクの妄想とこじつけのようなものなので、あまり期待せずに読み進めて頂きたい。

 

 

 

この曲を初めて聴いたのはTrySailのツアー名古屋公演だったが、第一印象としては爽やかさが強く残り、Bメロのワブルベースと大サビ前の完全な無音が特に印象的に感じた。正直なところを言うと同日に初披露された『かかわり』の方が気に入ってた。

 

その後、ライブで3,4回程見たが、この曲はいわゆるスルメ曲に分類され、聴けば聴くほど好きになっていった。特に千葉公演では先ほど述べた大サビ前の無音で"余計な雑音"*3が入らず鳥肌が立った。

またこの曲は振り付けが素晴らしく、特にサビの部分の振り付けは明らかに以前の曲よりも難易度が上昇していて、運動神経の悪いオタクには腕と足を連動させることが出来なかった。彼女たちの練習量を想像すると感慨深いものがある。

 

そしてつい先日CDが発売された訳だが、音源で聴いて一番衝撃的だったのはやはり大サビ前から大サビの入りにかけての箇所だっただろう。エコーからのチャイム、完全にやられた気分になった。しかもこのチャイムには地味に鉄琴の音が重なっていたりして、楽曲を通しても様々な音が鳴っていて楽しい。

歌詞の構成も非常に上手くできていて、全体を通して「自分を大切にしつつ一歩を踏み出す」というメッセージが込められている中、実際にアニメのOPで使われている1番は『亜人ちゃんは語りたい』のキャラクターやストーリーに沿った歌詞になっている一方、2番以降は歌っているTrySail本人たちに寄り添った歌詞になっていることが読み取れる。考察が大好きなTrySailのオタクに非常に向いているし、流石脚本家、構成が上手い。

 

このような感じで、『オリジナル。』は無事僕の中でTrySail好きな楽曲ランキングの2位につけたのであった。ちなみに1位は不動の『whiz』。

 

 

 

 

 

という感じで、素直に感じた事を書くと以上のようになる。

ここから本題に入るが、自分は夏川椎菜のオタクとして、この楽曲と夏川椎菜のソロデビューを結びつけずにはいられない。

 

 

 

 

この記事を読んでいる方ならばもうご存知だと思われるが、来たる2017年4月5日、夏川椎菜はソロデビューを果たす*4。年の初めに書いた予想よりも遥かに早くその時が来ることになり、一ファンとして素直に嬉しい。ブログ記事や各種媒体のインタビューを読む限り、実力不足は夏川本人が一番感じていて、非常に不安に思っているようだが、千葉公演での歓声を受け安堵と思われる涙を流していたのでこちらもひとまず安心した。

 

そして、このソロデビューシングルの表題曲の作曲は『オリジナル。』と同じくミトである。似たタイミングで夏川が出演した作品のOPの作曲者にソロ楽曲を任せるのはまあ意図的であると考えるのが自然である。これで作詞も同じだったりしたら完璧であるが。

 

またこの楽曲の名である「オリジナル(個性)」や、先ほど述べた通りの「自分を大切にしつつ一歩を踏み出す」という歌詞のコンセプト。実はつい先日発売された『B.L.T. VOICE GIRLS Vol.29』の夏川椎菜のインタビュー記事にこれに引っかかるような事が書かれている。

 

――人にはなんでもないことが10代のとき、コンプレックスだったりするじゃないですか?そういうことってあったりしましたか?

「ありました。私、習い事を極めていなくて、周りの子はピアノとかバレエとか勉強がすごくできたりしていたんですけど、私ってどれも"普通"だったんですよ。いや、普通よりちょっとできないくらい。(中略)だから、私がクラスで一番になれることってないなって、すごい悩んでいましたね。小中、そう思っていて、中学校のときが一番つらかったかなあ。」

――それをどう解決していったんですか?

「事務所のオーディションに合格したことが大きいですかね。誰かにちゃんと認めてもらえたんだっていうのがなんとなくあって、私もまだ気づいていないけど、私にしかなかった部分がもしかしたらあったのかもしれないと考えられたので。(後略)」

 

 

 

夏川椎菜はかつて"普通であること"、即ち"オリジナルがない事"にコンプレックスを感じていたのである。そこからミュージックレインのオーディションに合格し自分自身のオリジナルに可能性を感じ、そして今自分のオリジナルを苦悩し模索しながらソロデビューをするのである。結びつけずにはいられない。このあたりもB.L.T. VOICE GIRLSのインタビューに細かく書いてあるので、少しでも夏川椎菜に興味のある方には是非読んで頂きたい。

 

そのような歌詞の中でも特に大サビの歌詞にも注目してみる。JASRACを恐れず以下に引用する。

鳴り響く未来告げるチャイム 

進む道この先違っても

迷う時は別の空眺め

同じ星を見つけようよ

 

明日のこと思えば鼓動はやくなる

語りたいよ君の素敵オリジナル

 

 

1行目の「鳴り響く未来告げるチャイム」はこの場合夏川椎菜のソロデビューの発表、及びソロデビュー自体の事を指し、前半4行は3人それぞれがソロデビューした後のTrySailの事を描いていると感じた。迷う時はそれぞれの通ってきた道を通して(別の空を眺め)同じ星(TrySail)を見つけよう、とお互いにエールを送っているという解釈だ。

そもそも誕生日に「良いところを書いた紙を100個詰めた瓶」を送るようなユニットに「語りたいよ君の素敵オリジナル」なんて歌詞を歌わせるの、卑怯過ぎる。

 

 

最後に触れておきたいのがMVである。僕があのMVを見て一番印象に残ったのは、「雨宮天さん、なんか気持ち悪いほど笑顔作ってないか?」という事である。そこで表情に注目してみると、夏川椎菜はどちらかというと不安が見えるような表情をしていると感じた。麻倉ももさんは自然で優しい表情をしているような気がする。

自分はこの表情の作りはディレクションによるものだという予感がしていて、そこにもソロデビューへのメッセージが込められている気がしたのだ。

これからソロデビューする夏川には不安を、一方で先駆けてソロデビューしており、既にそこから多くの経験を吸収した雨宮にはその先に待つ喜びや希望を、麻倉にはソロ作品を一つ出したことにより緊張や不安が少し拭われた自然体の状態を表現させている、と受け取れる気がしたのだ。これを踏まえると「明日のこと思うと鼓動はやくなる」という歌詞も、不安や緊張で鼓動がはやくなるのか、それとも喜びや希望で鼓動がはやくなるのか、とそれぞれ違う風に読み取れそうだ。この表情の部分に関してはもう少し深く掘り下げることができそうなので、引き続き考えていきたい。

 

 

このような感じで、やはりこの『オリジナル。』という曲は特に夏川に対するメッセージの比重が大きい楽曲だと個人的には受け取った。後半部分は最早妄想が入ってるが、推しに甘いオタクなので許してほしい。この曲は様々な人が様々な解釈をすることが出来る可能性を持つ楽曲だと思うので、そういう点でも素晴らしい楽曲ではないだろうか。

 

 

これからソロデビューをする夏川椎菜さんには是非自分のオリジナルを発見し大切にしつつ、色々な経験を積んでそれを吸収した上で、素晴らしい役者になって頂きたいです。そういう意味も込めてこのような記事のタイトルにさせて頂きました。

 

 

最後にこの曲の好きなところランキングを発表して、この記事を終わりにしようと思います。長文にお付き合いいただき本当にありがとうございました。ツアーファイナル、横浜公演でまたお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○3位

3:21~3:26 「私だけがもつオリジナル」

落ちサビの夏川パート。特に「オリジナル」の部分が声量がしっかり出てて良い。ここまで書いてきた事も鑑みるとここに歌が割られてるのもエモい。

 

○2位

3:26~3:31 「震えてたあの日あの」

落ちサビ麻倉パート。Twitterでもめっちゃ言ったんですけどこの曲とMVの麻倉ももさんが好き過ぎる。特にこの部分の歌唱の透明感、そして最後のトーンの伸ばし方・フェードのさせ方がめちゃくちゃ良い。

 

○1位

3:40~3:44 「鳴り響く未来告げるチャイム」

流石にここには勝てない。チャイムの音被せるのは流石に犯罪。しかもライブでは全然聞き取れてなかったから音源で聴いた時の衝撃が尋常じゃなかった。文句なしの1位。

*1:

http://anisonsinger.blogspot.jp/2015/04/trysail.html

*2:HoneyWorks meets TrySail名義『センパイ。』含む

*3:イエッタイガーは用量・用法を守って適切な時に使いましょう。

*4:

http://www.natsukawashiina.jp/artist/shiinanatsukawa/info/477702